概要
Steamのピアツーピアマッチメイキングはロビーの概念に基づいて構築されています。 ロビーはチャットルームのようにSteamのバックエンドサーバー上に存在します。 ユーザーは新しいロビーの作成、ロビーとデータの関連付け、そのデータに基づいたロビーの検索、ロビーへの参加、ロビーで他のユーザーとの情報共有等を行うことができます。 1つのロビーは最大250人までのユーザーを収容することができますが、ほとんどのゲームでロビーにいるユーザー数は、2~16人です。 スキルベースのマッチメイキングはこのシステムを土台にして構築されています。
SteamのピアツーピアマッチメイキングAPIはユーザーが一緒にプレイする相手を探すための関数セットです。 マッチメイキング関数はすべて
ISteamMatchmakingに含まれ、各関数のパラメーターについての詳細が記述されています。 ロビーはユーザーやゲームサーバーのように、1つのSteamIDにより識別されます。 Steamworksの事例にはロビーの完全実装例が含まれています。
マッチメイキングプロセスの流れ
一緒にプレイするグループを作成する一般的なモデルは次の通りです。
- ユーザーがゲーム内でマルチプレイヤーでのプレイとマルチプレイヤーの種類(ルール、シナリオ等)を選択します。
- ロビー検索APIを使用して、ゲームがルールのセットに類似性のあるロビーを検索します。
- ロビーが見つかると、ゲームはそのロビーに参加します。ロビーが見つからない場合、新しいロビーが作成されます。
- ゲームを開始するのに十分なプレイヤーが集まるまで、ユーザーはロビーで待機します。 ロビーメンバーの間で、プレイしたいキャラクターやユーザーごとの設定等のデータが通信されます。 ロビーで定めるべきルール(たとえば、あるキャラクターをプレイできるのは1人のみ等)がある場合、ロビー所有者のみが決定権を持ちます。
- ロビーと関連したユーザーインターフェイスが存在することがあります。存在する場合は、ロビーメンバー同士のチャットメッセージ送信にロビーデータ通信機能を使えます。 ボイスデータも送信できますが、その際はSteamネットワーキング APIの使用が必要です。
- ゲーム開始の準備ができると、すべてのユーザーはゲームサーバーに参加するか、ホストになるよう選出されたユーザーに接続し、その後ロビーを退出します。 すべてのユーザーがロビーを出ると、そのロビーは自動的に破棄されます。
ロビーの検索
ゲームにロビーを検索させるには、
ISteamMatchmaking::RequestLobbyListを呼び出します。
この関数は非同期で、リクエストの状態を追跡するSteamAPICall_tハンドルを返します。 ユーザーのSteamバックエンドの接続状況によりますが、この呼び出しには300ミリ秒から5秒かかり、タイムアウトは20秒です。
返される結果の数は
LobbyMatchList_t呼び出し結果に含まれ、次に
ISteamMatchmaking::GetLobbyByIndexを使用してすべてを反復処理し、それらのIDを取得します。
最大50までの結果を返すことができますが、通常は2、3程度です。 結果は設定されたフィルターで近いものを基準に、地理的距離順に返されます。 デフォルトで存在する唯一のフィルターは、既に満員になっているロビーは返さないというもので、距離フィルターは
k_ELobbyDistanceFilterDefault(周辺)にセットされています。 フィルターの追加には
RequestLobbyList
を呼び出す前に、1つ以上のフィルター関数を呼び出す必要があります:
ロビーの作成
ユーザーが参加できる既存のロビーが見つからないときに、新しいロビーが作成されます。
ISteamMatchmaking::CreateLobbyを呼び出して結果を待ちます。 呼び出し結果の成否に関わらず、
LobbyCreated_t構造体内のロビーのSteamIDが返されます。そのIDはロビーのメタデータの設定に使用できます。 ロビー作成後、まず最初に行うのは、他のゲームクライアントがそのロビーを探せるように、ロビーについてのデータを設定することです(以下参照)。
ロビーへの参加
検索またはフレンドを通して適切なロビーが見つかると、
ISteamMatchmaking::JoinLobbyを使い、
LobbyEnter_tの呼び出し結果を待ちます。 ロビーに入ると、ロビーデータAPIを使用して、ロビーについての詳細を取得し、表示内容を決定します(表示するものがある場合)。
ユーザーがロビーに参加またはロビーから退出する場合、
LobbyChatUpdate_tコールバックがオーナーを含むロビー内すべてのメンバーに送信されます。
ロビー内のユーザーへの反復処理には以下を使用します:
ロビー内の別のユーザーについて情報を入手するには、フレンドAPIを使用します。詳細は
フレンド、招待、ロビーを参照してください。
ロビーのメタデータ
ロビーのメタデータを使用すると、ロビーの名前、現在のマップ、ゲームモード、ゲームの現在の状態など、ロビーを自由に設定できます。
ユーザーは所属するロビーの最新データを自動的に入手します。 検索結果から返されたロビーでは、ユーザーは検索した時点でのロビーデータを入手します。 フレンドのロビーの場合は、
ISteamMatchmaking::RequestLobbyDataが呼び出され、完了するまではロビーデータを見ることはできません。
ロビーのデータに変更があると、すべてのロビーメンバーは
LobbyDataUpdate_tコールバックを受け取ります。(このコールバックは
ISteamMatchmaking::RequestLobbyDataコールが完了したことを知る方法と同じです。)
ロビーデータの入手または設定に使える関数があります。 ロビーデータを設定または削除できるのは、ロビーオーナーのみです。
メタデータの反復処理に使用する関数(通常デバッグ用にのみ使用されます):
ロビーでは、他のメンバーが次の関数を使用して更新データを受信できるように、メンバーが独自のメタデータを設定することもできます。
ロビー内でのコミュニケーション
ロビー内で情報(チャットメッセージ、ゲーム開始シグナル等)を送信するには、
ISteamMatchmaking::SendLobbyChatMsgを呼び出してください。これはシンプルなバイナリメッセージをロビー内の全員に送信します。 ロビーメンバーは
ISteamMatchmaking::LobbyChatMsg_tのコールバックをListenする必要があります。 コールバックを受け取ってから、
ISteamMatchmaking::GetLobbyChatEntryを使ってメッセージのコンテンツを取得できます。
フレンド、招待、ロビー
フレンドAPIを使ってフレンドが待機するロビーを見つけることができます:
int cFriends = SteamFriends()->GetFriendCount( k_EFriendFlagImmediate );
for ( int i = 0; i < cFriends; i++ )
{
FriendGameInfo_t friendGameInfo;
CSteamID steamIDFriend = SteamFriends()->GetFriendByIndex( i, k_EFriendFlagImmediate );
if ( SteamFriends()->GetFriendGamePlayed( steamIDFriend, &friendGameInfo ) && friendGameInfo.m_steamIDLobby.IsValid() )
{
// friendGameInfo.m_steamIDLobby は有効なロビーで、参加またはRequestLobbyData() を使用してメタデータの取得が可能
}
}
ISteamMatchmaking::InviteUserToLobbyでフレンドをロビーに招待できます。
そのユーザーはゲームに参加するためのリンクを含むチャットダイアログを受け取ります。 ユーザーがリンクをクリックすると、ゲームを起動していない場合には次のコマンドラインによってゲームが起動します:
+connect_lobby <64-bit lobby id>
。 コマンドライン経由でローンチされた際にポップアップ警告が表示されることを無効化するには、アプリに
ISteamApps::GetLaunchCommandLineが実装されていることを確認してください。
ユーザーが既にゲーム内にいる場合には、ユーザーが参加を希望するロビーのSteam IDを含む
ISteamFriends::GameLobbyJoinRequested_tコールバックが送信されます。 従うかどうかはゲームが決定します。
ユーザーに、リストの中からロビーへ招待するフレンドを選択してもらいたいときは、
ISteamFriends::ActivateGameOverlayInviteDialogを呼び出します。
これにより、現在のロビーにフレンドを招待するためのダイアログでSteamゲーム内オーバーレイが有効化されます。
認証
Steamロビー内のすべてのユーザーはSteamバックエンドで完全に認証されています。 VAC禁止を受けたかどうかを調べる以外には、ロビーユーザーを追加でゲームが認証する必要はありません(VACについては、
Valve アンチチート (VAC) とゲーム禁止を参照してください)。 ユーザーが別の場所から同じアカウントでログインを試みると、以前のログインは現在のロビーから自動的に排除されます。
クリーンアップ
ゲームが開始すると、次のAPIによってユーザーはロビーから退出できます:
ISteamMatchmaking::LeaveLobby全員が退出すると、ロビーは自動的にバックエンドで破棄されます。
ロビーのヒント
- 一般的に、必要な時だけロビーを作成してください。 例えば、ユーザーがフレンドをプレイに招待した時や、ロビーを必要とする手動操作がトリガーされた時です。
- ロビーのメタデータを高頻度で更新しないでください。 検索に使用されるメタデータと値のみを追加してください。(例えば、ゲームの種類やゲームの状態など) ロビー検索は、利用可能な空きのあるロビーだけを検索するようにできているのでプレイヤー数を入れる必要はありません。
- メタデータを探すためだけにロビーに参加しないでください。 ロビーメタデータは、すべてのロビー毎に別々にダウンロードできます。ゲームはそれを使って、ロビーのリストをユーザーに表示して選択させるか、ユーザーが参加するロビーをゲームが自動で検索結果から決定できます。
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